2022.07.29

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新築は最高の省エネレベル?(その2)

新築は最高の省エネレベル?(その2)

今回のコラムでは性能は数値が全て?について記載したいと思います。

現在省エネで決められている数値は外皮の性能と一次エネルギー削減率です。

「数値が良い方が夏涼しく冬暖かい」と思いますよね?本当でしょうか?

 

解りやすいようにプランを例にシュミレーションソフトを用いて検証したいと思います。

全く同じ建物で、片方は南面の窓のみを削除しました。

ですので、違いは南面の窓の有無だけです。

この2プランで比較します。

南の窓から太陽の光が潤沢に入る、無暖房、無冷房、窓には常時レースカーテン設置
での検証です。

 

まず、外皮平均熱貫流率の数値から。(等級〇と言われる数値です)

窓は外壁に比べ熱を伝えやすく、多いほど外皮平均熱貫流率の数値は不利になります。

結果:【南窓無しプラン】の方が熱が伝わりにくく性能が良いという事になります。

 

次に、冬のお昼の室温の比較をしたいと思います。

冬の晴れた日、太陽の光を多く取り込むことによって

下記の様に【南窓有りプラン】の方が暖かくなるのです。等級〇とは逆の結果です。

お昼は暖かいけど、太陽が沈むと寒くなるんでしょ?と思いますよね。

そちらも検証してみると早朝(日の出直前)それほど大きな差は出ませんでした。

お昼に太陽エネルギーを沢山取り込んだ分、【南窓有りプラン】は室温が高く、

下がり始める温度が【南窓無しプラン】より高いのです。

【南窓有りプラン】と【南窓無しプラン】を比較すると

お昼は【南窓有りプラン】が 6.9℃高い

早朝は【南窓無しプラン】が 0.8℃高い

となりました。

温度を見れば【南窓有りプラン】の方が総じて暖かいと思いませんか?

 

では、夏はどうでしょうか?

夏の晴れた日、太陽エネルギーを取り込んだ分、【南窓有りプラン】は室温が高くなります。

こちらは、想像通り。

夏の15時【南窓有りプラン】が2.1℃高い

ただ、冬ほど室温が上がっていません。

冬の15時【南窓有りプラン】が6.9℃高い

どうしてでしょうか?

 

それは、太陽の高度によって室内に入る量が違うからです。

冬は太陽高度が低く、室内に多くの直射日光が差し込みますが、

夏は太陽高度が高く、室内に入る直射日光は限定的なのです。

シュミレーションでは、南面は庇や、屋根の軒は無しで設定していますので

単純に太陽の違いによる差となります。

こういう結果を見ると、等級〇の数値だけが全てでは無いのだなと思いますよね。

(もちろん等級〇も重要で断熱の性能を上げることで効果がより向上する事もあります)

 

上記のプランは比較の為、窓にレースカーテン、庇等はなしで作成しています。

冬の夜、ハニカムスクリーンや障子を閉めれば熱は逃げにくくなります。

夏の昼、庇や雨戸、シェード等で直射日光を遮れば、多少でも室温は下がります。

そもそも、夏は窓を開けるだけでも、外気温と同じ温度に下がり、熱のこもりを解消出来ます。

残念ながら、熱のこもりは断熱性能(等級〇)が良いほど起こりやすくなるのです。

 

今回の結果は、このプラン限定の結果です。

各住宅によって、間取りや形状も違えば、断熱の仕様も違います。

敷地によっては南からの直射日光が入らない敷地も有ります。

冬、南の直射日光が入らなければだいぶ結果は違います。

(敷地の南側に空地が無いと絶対ダメという事ではありません)

<それぞれ、違う>のです。

だからこそ、数値等級〇だけが全てでは無く、1件づつ特性を生かした検討が必要なのです。

 

今回は、パッシブデザインの一つ(日射熱利用)について記載しました。

日本は昔から、軒を出したり、すだれをかけたり、電気を使わずに日射熱を上手に利用していました。

自然を生かすパッシブデザインは持続可能な脱炭素の手法の一つなのです。

 

アトリエムラカミでは、日当たりシュミレーションも行っています。

日当たりが気になる、という方お気軽にお問合せ下さい。

敷地購入前でも大丈夫、気になる敷地がありましたら是非ご活用下さい。